事業項目 Work Packages
JHPC-quantum
11.
ライフサイエンス・医療・創薬分野の
量子HPC連携アプリケーションの開拓
これからの量子HPC連携アプリケーションの重点分野として、ライフサイエンス・医療・創薬分野に焦点を当て、実際の量子コンピュータを活用するアプリケーションを開拓します。
概要overview
これまで、他の事業項目では物性・量子化学分野での量子シミュレーションアプリケーションの開発や量子・HPC連携システムを利用するモジュール型量子計算ソフトウェアライブラリの研究開発が進められてきました。この事業項目では、量子シミュレーションや量子機械学習、量子最適化を総合的に活用する分野として、ライフサイエンス・医療・創薬分野を位置付け、量子・HPC連携アプリケーションの探索的な検討・研究開発を行います。目標としては、ライフサイエンス・医療・創薬分野において、「量子有用性」を実証することです。この「量子有用性」とは、HPCやAIとの組み合わせの中で「量子計算から得られるサンプルがHPCやAIの解析性能を向上させる」ということであり、「量子コンピュータがQC-HPC-AIワークフローの中で実際の科学的・産業的価値を生み出せること」を示すこととします。
事業内容detail
最初のステップとして、ライフサイエンス・医療・創薬分野の量子HPC連携アプリケーションを調査し、取り組むべき課題を明確化します。その後、いくつかのアプリケーションを具体的にJHPC-quantum プラットフォームで実装・評価し、「量子有用性」の実証に取り組みます。
具体的には、以下の取り組みを行います。
(1)GPU・QPU・HPCの連携による量子機械学習のライフサイエンス・医療・創薬分野アプリケーションの調査・開拓
量子機械学習は、従来の機械学習を越えることが期待されていますが、現状の限られた量子ビット数では量子機械学習のみを用いるのは困難です。そこで、GPU・QPU・HPCを組み合わせたときに初めて価値が出るライフサイエンス問題を見つけ、その有用性を実証することを検討します。GPUで探索空間を絞りQPUの量子機械学習を行う組み合わせが考えられますが、QPUに対してどのように入力を埋め込むかの問題を解決する必要があります。さらに、QPUの活用として、GPUで学習・特徴抽出、QPUで高次元確率分布の表現・サンプリング、HPCで大規模データ処理・検証を行うことも検討します。これにより、GPU・QPU・HPCのハイブリッド計算の有効性を実証できるだけでなく、本プロジェクトが進めてきたプラットフォームの先進性を活用することができます。
具体的には、以下の医療分野の問題に対して、量子コンピュータの活用を検討します。
・小児ミトコンドリア病(3,100例)の薬剤再利用候補の探索
・初期臨床研修医のメンタルヘルス介入資源の配分最適化
・UK Biobank脳MRI(約6万例)から高次元特徴量の量子カーネル法による選択
(2)生命医科学応用のための量子HPCハイブリッド機械学習および量子回路自動生成の研究
生命医科学分野では、オミクス観測技術の急速な進展や、それらに臨床情報や画像情報なども加えたマルチモーダルデータが集約されており、医療・生命科学のビッグデータを成しています。しかし、それらのデータは、サイズの大きさのみならず、高次元・相互作用性、ヘテロ性、スパース性、非線形性が強く、従来の計算方法を超えた解析方法が求められています。近年発展が目覚ましい量子計算と生成AIを利活用することによってこの問題を解決する新しいパラダイムを提案します。ここで、生命医科学分野で扱うデータはいわゆる古典的データであり、量子性は通常は考えないことから、量子回路にいかにデータを埋め込むか、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)といかに連携して効率よくプロセッシングするか、そしてそれらに基づきいかに適切な量子回路を設計するかを検討します。
(3)量子HPCハイブリッドコンピューティングによる創薬のための大規模生体分子解析
これまで、SQD法を用いることにより、生体に関係する鉄・イオンクラスタ分子の精緻な基底エネルギー計算やフラグメントに分割することにより、個々のフラグメントをSQDで計算し、大規模な生体分子系のエネルギー計算・ドッキング解析ができるようになりました。また、生体分子中の様々な現象をとらえるには分子中の電子輸送問題を必要がありますが、全体を既存のHPCアプリで解析し、電子輸送解析が必要な部分に量子コンピュータを使うなどの試みが行われています。
特に創薬分野では、さらにこのような取り組みを進める必要があり、GPUによる機械学習と組み合わせるなどの高度な解析を可能とします。
プロジェクトメンバーproject members
理化学研究所計算科学研究センター
プロジェクトリーダー
- 佐藤 三久
- 量子HPC連携プラットフォーム部門